私とラグビー 岡山県桃惑ラグビー/渡辺　治

　19歳の春、希望の大学に入り千葉県市川市の幼稚園のようなカラフルな校舎で入学式を迎え、ふとグランドに立ち寄ると、十名程の先輩が楕円形のボールを一生懸命追いかけていた。高校時代これといったスポーツもせず、冬の体育の授業で何回かやっただけの私の目から見てもお世辞にも洗練されているとは思えず、ぽろぽろボールを落としている様は、見ていて歯痒くさえ思えた。それから数日が経ち、たまたま講義のとき隣に座った同級生のお兄さんが、ラグビー部のキャプテンでなんとなく誘われるままグランドにいったのが、私のラグビー源体験でした。
　当時の我が大学は、サッカー部が関東医歯薬リーグ１部常勝のチームであり、グランドは彼等に独占されていた。我々のクラブはグランドの片隅で、関東医歯薬リーグ２部の悲哀を噛み締めていた。このごろ部長兼監督が秋田高校ＯＢと言う事もあり、夏休みの合宿を秋田で行うこととなり、毎年秋田八橋のグランドを借りる事ができ、秋田高校、秋田商業、金足農業といった高校生の胸を借りて徐々に強くなっていった。数年は瞬く間に過ぎ、卒業も近ずき、６年生最後のリーグ戦(３年前から１部に昇格)最終戦で念願の１部優勝をはたし、美酒に酔い神田の町で裸踊りをして警察で始末書を書かされたのも今では良い思い出となった。こうして私のラグビー生活は終りを告げ、以来15年間研究者生活に入り、ほとんどラグビーとは縁のない生活をしていた。
　こう見てくると私のラグビーはスキルを磨いて、体力を付けてというより楽しく、仲間を作って、程々にという本物のラグビーマンから言わせれば風上にも置けないといったものだったような気もしますが、ラグビーは楽しいスポーツだということを肌で感じることができ、その気持ちを今次男が熊谷ラグビースクールで味わっている。数年前皆さんの熊惑にいれていただき、20年ぶりに楽しい思いをさせていただきました。熊谷に全く知人のいなかった私にとって、熊惑の皆さんと知り合え、一緒に酒を酌み交わした日々は、生涯忘れることのない思い出となりました。何回か試合にだしていただき、20年前の感動が甦ってきました。しかし50に近い身体は20分ハーフの試合を楽しむまでに、1年半を要し、初めの半年は身体の節々がいたく、練習後の２〜３日は寝返りも打てないほどでした。でも何とか皆さんと走れるようになり、今では日曜日に練習がないと物足りなく思うようにまでなりました。現在熊谷からは遠く離れた倉敷で、家業を継いでおりますが、できるだけラグビーと係わりながら、生活を楽しむように心掛けております。岡山は埼玉と違ってラグビー後進県ですが、私と同じくラグビーを楽しむ人はいるもので、熊惑のときと同じく、日曜日にはグランドに集まり、スクールの子供達と楽しく走り回っております。今年は残念ながら都合で中止になりましたが、近い将来熊惑を向かえ、我々の桃惑と楽しい試合ができるよう準備しておくつもりです。そして熊谷を訪れた時は一緒に仲間にいれて下さい。
　熊惑の20周年の記念誌に一文を載せていただく光栄にお礼申し上げると共に、今後の発展そして皆様の健康を願って筆を置きます。
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